坂本龍一「async」①

3月に発売した「async」ばかり聴いている。

 

自室のオーディオシステムで、車中のカーステレオで、そして新型ウォークマンで。

様々なオーディオ再生機により、それぞれの環境で聴く「async」。

音環境は違っても、そこには確実に一人の音楽家が到達した音風景が広がっている。

 

同時にこのアルバムの世界観に近いアルバムも聴いている。

特に前作「out of noise」、2001年に様々な展示会で使用された作品を集大成した「COMICA」、映画サウンドトラック「THE REVENANT 」、「Year Book 2005-2014」というようなアルバムたち。「async」以上に、どのアルバムも静かな音空間が広がっている。

90年代の細野晴臣によるアンビエント音楽群が好きな自分としては、違和感なく聴くことができる音楽たち。

そのせいか、自分にとって常に定番アルバムである「音楽図鑑」、「未来派野郎」をほとんど聴かなくなっている。

 

「Year Book 2005-2014」は発売時に数回聴いた程度で、その後聴かなくなっていたアルバムだが、最近ではほぼ毎日聴いている。このアルバムは坂本龍一の近年10年間の音楽傾向が分かるアルバムであり、なぜ坂本龍一が「async」にたどり着いたのか理解できるアルバムである。

この作品には「async」への、断片的なカギがある。

 

さて、「async」の評価で気になるものが多い。

特に「メロディがない曲が多いアルバム」という評価。

一体、何を聴いているのだろうかと思う。

どの曲にも彼にしか作り出せないメロディが存在しているではないか。一聴しただけでは分からない旋律。

いわゆるチャートに登場するような分かりやすい旋律を持つ楽曲を求めているのだとしたら、このアルバムは聴くべきではない。

 

YMO写真集「 OMIYAGE」。

この写真集には今に繋がる様々な元YMOメンバーの音楽的予言が隠されているが、

P76 「23マリー・シェイファーと彼の本」では、サウンドスケープデザイナーであるマリー・シェイファーについて紹介すると同時に将来彼のような仕事がしたい、としている。それを「async」で試みていると感じる。

自分の聴きたい音を採集し、または作り出すことで、「async」を音のアルバムに仕上げている。

だからこそ、コンサートではなく空間芸術であるインスタレーションとして公開したのだろう。噂ではインスタレーションとして公開した「async」5.1chヴァージョンのリリースも予定されているとのこと。残念ながら公開されたインスタレーションは鑑賞できなかつたが、自宅シアターで楽しめることは喜ばしい。まずは気長にリリースを待つとしようか。

 

「async」では、ゲスト参加が極端に少なく、坂本龍一の「個」が感じられる作品に仕上がっている。

例えば「千のナイフ」、「音楽図鑑」といった作品や、音響音楽の数々など、音楽家「坂本龍一」の頭の中で完結している作品群が好きなため、非常に嬉しく思った。

 

音楽に専念する「知的な坂本作品」を支持する者として、この8年ぶりの作品は誰がどんな評価をしようと、自分にとって現時点でのベスト作品であり、愛聴盤になるのは間違いない。

このアルバム「async」を支持する。